罪は流れて、雨粒にわらう




 過剰な防衛本能が顔を出して、つい口調も強くなってしまう。


「って……あー、ごめん。昨日はチカちゃんといたから癖が染みついてて、つい絡んでた。はい、もうなんもしないから」


 チカちゃんって、和氣先輩のことでは?
 つまりそういうことかと思い至るのも億劫で、あえて触れないでおいた。


 そんな私の訝しげな眼差しを受けてか、ミヤケンは反省の色を見せて一歩後ろにさがる。
 彼に警戒しながらも、私はようやく本題を伝えた。


「さっきも言いましたけど、昨日のことを謝りたくて。あとお礼も」


 ミヤケンが話を聞く体勢に入った隙に呼吸を整える。
 軽く上を見あげると、視線がかち合った。


「ありがとうございました。車に運んでくれて、このカーディガンも……掛けてくれたんですよね?」


 ようやく紙袋を渡せたと思えば、ミヤケンは驚いたように目を丸くする。
 受け取って中身を確認すると、さらに驚愕していた。


「なんか、すごい綺麗になってない? いい匂いするし、まさか洗ってくれたとか」

「あの状態ではさすがに返せないですし……私が吐いたせいで汚れていたので。それと、宮くんに向かって吐いてしまって、本当にごめんなさい」

「なーんだ、そんなの気にしてたのか。べつに謝る必要ないでしょ。佐山ちゃん、具合が悪かったんだからさ」


 頭をさげればすぐに楽しげな笑い声が降ってきて、目が点になりそうだった。

 友林先生の話を信じていなかったわけじゃないけれど。
 でも、本当になんとも思っていない素振りのミヤケンには改めてびっくりする。