罪は流れて、雨粒にわらう




「宮くんって、よく授業をサボる人だって噂で聞きましたけど……やっぱり休むことも多いんですか?」


 どちらにせよ一度は会ってお礼がしたいし、謝りたい。あとカーディガンも返したい。

 可能なら生徒の目につかないところで声をかけたいけど、そうなってくると場所は限られてくるだろう。

 校門をくぐり抜けたタイミングでこっそりと……なんて思ったけれど、ミヤケンは朝から律儀に登校する人なのか、興味がなかったので知らない。



「サボりが多いけどな、宮は毎日学校には来てるんだぞ」


 思い悩んでいると、友林先生はさらりと教えてくれた。


「そうなんですか?」
「今の時間なら……たぶん、旧校舎裏の花壇だな」


 友林先生からしてみれば、ミヤケンは隣のクラスの生徒で担任でもない。
 どうしてそこまで的確に把握しているのか疑問に感じる。
 校内の有名人ともなると、行動を知っていたほうが先生もやりやすいということなのだろうか。


「花壇、ですね。ありがとうございます。今から行ってみます」


 三年の和氣先輩にも一言お礼を言いたいけれど、三年生の教室にまで行くのは逆に目立ってしまう。
 とりあえず、まずはミヤケンに会いに行こう。


「今日も花に水をあげてるだろうから、すぐに見つかるぞ」


 去り際に友林先生が言った意味を、私は職員室を出たあともしばらく考えた。

 知る人ぞ知る女好きの遊び人。加えてチャラ男や、モテ男子と呼ばれるような人間が、花壇の花に水をあげている?

 昨日の疲れが響いているみたい。
 変な聞き間違いをしてしまった。