罪は流れて、雨粒にわらう




「こう言っちゃなんだが、宮の評判は教師陣にも知れ渡っているんだ。散々注意も指導もしているが改善された試しがない。だからもし、佐山が宮にちょっかいを出されたりしているんだったら……」

「ないです。ありえません。絶対に。というか、先生は私がどんなふうに学校生活を送っているのか知っていますよね?」


 友林先生が初めに困った顔をしていた理由がわかった。保健室で出くわしたのが、様々な意味を持って有名なミヤケンだったからだ。

 変な心配までされそうになり、自分からいわゆる「ぼっち」だということを告げる羽目になる。

 人付き合いを避けている私が、ミヤケンと接点なんてあるはずがない。


「すまん。いや、本当にすまん。そうだな、先生が悪かった」

「いえ……だけど、私を母の車まで運んでくれたのもミヤケン……宮くんなんですよね?」

「ああ、そうだ。宮のやつ、俺が病院から戻ったあとも校舎に残っていたみたいでな。あの子は大丈夫だった? って、聞いてきたぞ」

「本当ですか? 私……宮くんに向かって思いっきり吐いちゃったので、ちゃんと謝りたいんです」


 口に出すといたたまれない心地になる。
 けれど友林先生は、思い出したふうに「ああ」と軽い反応だった。


「言っておくが、宮は全然気にしてなかったぞ。だからそこまで怯えなくても大丈夫だ」


 他人の嘔吐物をかけられたのに、気にしない人なんて果たしているのだろうか。
 それが事実ならば、私の中にあったミヤケンのイメージはがらりと変わることになる。


「そんなに、心が広い人なんですか?」
「心が広いっていうか、なんだろうな。まあ、宮は……そういうやつなんだよ」


 よく、わからなかった。
 友林先生はミヤケンに対して、なにか思うところがあるみたいだけれど。