心優しい国王は王妃を堂々と愛したい

それ以降、
体調不良を訴える国民は
増加の一途を辿った。
身体が異常なほどに浮腫んだり、
目眩や貧血で
ベッドから起き上がれない者もいるという。
これだけの被害が出ているというのに
なんら有効な対策を取ってくれない政府に
国民の不満は増していった。

そしてついに、
恐ていたことが起こったのである。

最初の被害者は
薬草やハーブを使って
昔ながらの民間療法を行っていた老婆だった。
「治療を行っているふりをして、実は呪いをかけているんじゃないのか?」
診療所を訪れていた患者の1人が
そう叫んだことに端を発し、
原因不明の体調不良に
疑心暗鬼になっていた国民たちの間で
一気に同調圧力が高まっていく。
あらぬ噂はあっという間に広がって、
心優しき老婆は
あれよあれよと魔女に祀り上げられてしまった。
それから程なくして、
この老婆は何者かに撲殺されて
変わり果てた姿で発見された。

当然、
これで一件落着となるはずがない。
人々は次なる魔女を探し始めた。
標的となったのは
あの老婆のように民間療法を行う者、
産婆や女医、
一人暮らしの女性などである。
オーディンはこの事態を重く見て、
魔女狩りを辞めるよう命令を出すが効果はなかった。