モモイロセカイ

誰も話し始めない、気まずい空間だ。

「……直人からちょっと聞いたんだけど、もしかしてモモ…、俺を探しに来てくれてた?」

「…ん」

モモは自身の爪を撫でながら口を引き結んでこくりと頷く。

夕日はソファーに座るモモと同じ目線の高さになるように、床のカーペットに膝を着いた。
謝らなければと焦燥感を目にモモを見上げる。

「ごめん、ほんとごめん…」
「俺からも、夕日を止めなかったことを謝らせてくれ…。すまねぇ」

モモはただキョトンとしているだけだ。

「?なんで謝ってるの?
…モモ、覗いちゃってごめんね」

なぜ謝られているからわからない。
まあ当たり前だとは思う。

モモと夕日は付き合っているという訳でもない、ただモモが夕日に拾ってもらっただけという関係性なのだ。
モモの中ではその関係性が明確に出来ているような気がする。

結局はこの気持ちが夕日の一方通行なんだと思うと、余計に辛い。

「うん。ごめん…」

モモを抱きしめたいが、抱きしめてもいいのだろうか。
恐る恐る手を伸ばすとモモが手に触れたため、夕日はモモの手を引きその体を抱き込んだ。

「わ、わ!」

「…ごめん。これからは、絶対にしない」

モモは夕日の勢いに押されたように困惑顔でうんと頷く。

謝っても謝りきれない。
例えモモが気にしていなかったとしても、夕日自身が他の人との性行為を見られたこと自体が嫌なのだ。

モモはゆっくりと押し付けられる夕日の髪を、いつも夕日がモモにしてくれているようにただ梳いた。

「あの時の夕日、なんて言うか…
ちょっとえっちだった」

夕日を直接は見つめずに、少し頬を染めて照れながらモモは秘密話のように小声で、囁くように夕日の耳に顔を寄せて悪戯げに言う。

「ねぇモモ…ダメだって。
襲いたくなる」

夕日がゆっくりと顔を上げたことにより、もう少しでも動けばどこかしらが触れ合ってしまう距離だ。
お互いの吐く息が顔に掛かる。

「大丈夫。
モモは、夕日が大好き」

モモから、顔を近付けチュッと音を立てつつ軽く夕日の唇に触れさせる。