モモイロセカイ

ボールペンはこんな風に使うものなんだ、とモモは試しに緑色でグルグルと枠を囲ってみる。

なんだか微妙だ。
何もしない方がいいような気がする。

モモは、ハハハと笑って少し気まずそうに目を逸らす奈子に目を合わせてにっこりと微笑んだ。

「よぉ」

板書をし終えたらしい直人もモモが学校で楽しそうに話している様子が気になるのか、彼は空席だった夕日の席をガラガラと移動させモモに近付いてくる。
クラス中がその様子に目を留めザワザワとしているのだが、奈子は平然としているモモを驚いたように見た。

「え、モモちゃん、夕日様だけじゃなくて真弓くんとも仲良かったんだ?」

「…?」

いきなり真弓くんと呼ばれて誰のことか分からなくなったが、モモはそれが状況的に直人のことを指しているのだと何となく察した。

そういえばそんな家族の名前をしていたような気もする。

「まぁ仲は悪くはねェな」
「ん、仲良いよー」

ふわふわと会話をしてはいるが、直人が夕日の席に座ったことでモモの中で夕日がどこへ行ったのだろうかという忘れかけていた疑問が再び表に出てくる。
思い出したらそれが、ますます気になってくる。

「そうなんだ!
そういえばモモちゃん、この問題なんでかわかった?」

「金属元素の自由電子が関係してるのかなーって思って今見てるー」

なんだか朝日がそんな性質があると少し言っていたような気がする。

いったいどこに載っているのだろうかとモモは教科書の隅をじっと眺めた。目が文字を滑っていくだけで何も理解ができない。
あくまで体の不調ではなく、ただ別に気になることがあり集中出来ていないだけなのだ。

気になるのであれば知ってそうな人に聞くのがいいだろう。