モモイロセカイ

夕日は席はどちらでもいいというので、モモは横並びに空いている1番後ろの席の内側を選んで座った。
モモが自分の席を貰うということは初めてで恐る恐る腰を下ろすが、なんだかやはり座った椅子が冷たく感じる。

チラチラと夕日を伺うと、彼はボーッと眠たげに目を細め前を見ているようだ。

担任が生徒全体に向けて、間延びした声で何かを話しているようだが大事なことでは無さそうなのでモモは聞き流すことにした。

自由に隣と話している女子生徒を見る。小声で囁きあって楽しそうだ。
いいなぁ、モモも、と思いキラキラした目で女子生徒を見つめていると、女子生徒はモモの視線に気がついたのか振り返り、そのままモモと目が合う。

「あ!」

女子生徒はモモに気づくとトントンと相方の机を叩きモモを指差した。そしてモモに笑いかけると、机の下から見えないようにこっそりと手を振ってくれる。

モモは喜色満面で手を振り返した。

緩い雰囲気のクラスはそのまま流れ解散になるようで、モモが見ていた生徒は話していた相手に笑いあってから席を立った。
どうやらそのままモモに近付いてくるようだ。

ワクワクと待っていると、モモの気を逸らすように夕日がモモに呼びかける。

「モモ。ここ、座りたかった?」

先ほどのどことなく寂しそうなモモの様子を横目で見ていたのだろうか。
夕日は椅子を引き、トントンと少し開いた股の間を叩いてみせる。

正直言うと座りたかったが、今のモモには女子生徒たちの方が気になっていた。

「うーん、でも今はいらない」

「…そう」

だからモモは、仄暗い色を目に宿している夕日には気が付けない。