モモイロセカイ

モモは夕日の言っている意味がよく分からずに首を傾げた。

モモが夕日から逃げる。
夕日の顔を見たら、モモが怖くなって逃げると言っているのだろうか。

そんなことは絶対にしないとモモは口を尖らせて夕日を睨んだ。

「そのセリフをお前の口から聞くとは」
「話すことが無いんでしたら教室に向かっても?」

夕日が話に割り込んでも怒る様子はなく、校長は大きな茶封筒から手を離し悪戯気に目を細めクツクツと笑うだけだった。

「ふん。
そういえば忘れていたが豹は慎重に行動するんだったな」

夕日はモモの手を引いて校長室を出て行こうとする。

モモが本当に出てもいいのだろうかと振り返ると、校長はまだモモを見つめており目があった。
笑っているが、その笑みはなんとなくだが先ほどの夕日を揶揄うような笑みより柔らかくなっているように思える。

「あぁ、そうだ。
クラスはお前と同じところに入れてやったから担任に顔を見せておけ」

そんな校長の言葉を最後にモモが連れ出され、ドアが校長の姿を断つように閉まった。

「はあ…。ごめん、あれが校長の本性だから。
前回はまともな対応をしてたから大丈夫かと思ったんだけど。
チームのメンバーたちもよくあの人にあぁやって揶揄われて遊ばれてる」

だからメンバー達も校長室には行きたがらないんだよなとため息をついて呆れたようにいう夕日だが、その言葉にはどこか仲間を庇っているかのような信頼の響きがある。
それが夕日と校長はある程度仲はいいのだろうと思わせた。

モモは珍しい疲れたような夕日の表情を見ると、くすくすと笑った。

先程の夕日の表情は見れなかったのは残念だが、この夕日のレアな表情を見れただけでも今日はいいかもしれない。

「ずっと真面目そうな人って思ってたけど、面白そうな人だった!」
「そう?」

いつものモモに甘い顔を向ける夕日も良いが、モモも校長のように夕日から色々な表情を引き出して見たいと、そう思った。