それは違うと口に出そうとした華より先に、直人が声を出したので華は一度口を閉じた。

「おーおー良かったな華、可愛い妹分が出来てよ」

夕日の肩に肘を置き、直人はニヤニヤと華を見つめている。
これは外堀を埋められているのだろうか。

期待するような視線を向けてくるモモには悪いが、華にとっても自分から比べてしまうモモをこれ以上近くに置きたくなかったのだ。

断らなければ。

どうやって切り出そうかと考えると体が強ばるのを感じた。

ふとモモに目を向けると、モモは華の方をずっとみていたようでバチリと目が合った。
モモが困ったように笑うのが見え、それから目がスッと逸らされた。

「あっ…」

「華がお姉ちゃんなら、直人はモモの弟?」
「は?!俺どう見ても兄じゃねぇの?!」

話題を逸らすかのようにモモが言い、ギャーギャーと直人が騒ぎたてることで、その場の雰囲気が柔らかいものとなった。
華は切り詰めていた息をようやく吐き出す。

たまにこういうことがある。

モモは、まるで華が何を思っているのかを理解しているような行動を取るのだ。
モモに見られると、なんだか心に隠している後暗いことを全て覗かれてそうで自分が嫌になる。

…それでも、本物ではなく、家族ごっこぐらいであれば付き合ってやってもいいのかもしれない。

「じゃあ、モモにとって俺はなに?」
「んー……、モモの一番好きな人だから…なんだろう?」

モモに一番好きな人だと言われた夕日は、緩んだ顔を見られないようにか、モモの首筋に顔を埋めギュッと後ろから抱きしめる。

本当に見せつけられているようで嫌になる。
だから、華は二人の空間に水を差した。

「お兄ちゃんじゃないんですか?」

「お兄ちゃん?」

夕日が嫌そうに顔を顰めながら華を見るのが、視界の端でもわかる。
直人が吹き出して笑っていたので、華は腹いせに直人の肩を叩いた。

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