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それは着々とモモが学校に通うための準備をしていた日のことだった。

モモは一生懸命勉強をしているようで、夕日からは少し離れたところで朝日に教わっているのが見える。
朝日も何気に面倒見がいいので、順調に教えているのだろうと思う。

夕日から校長に話を通した所、夕日が保護しているという体で、なんとかモモは身分証を偽装せずに学校に入れることが出来た。
とはいえ、緊急連絡先や個人情報をまとめた書類は書かなければいけないようで、先日彼のお気に入りである茶封筒に入った結構な枚数のある書類を渡された。

夕日はペラペラと紙をめくり必要となる情報を確認していく。

住所や連絡先などの埋めれる情報から埋めていき、夕日はとある大きな四角で囲ってある枠でピタリと筆を止めた。

生徒氏名と書かれてある欄である。

夕日は少し考えた後、姓の所は空欄で開けておき名の方に(モモ)と書き込むんだ。
桃ではないのかと考えるも、元々夕日がモモと名前をつけた時も、なんとなく100番だからモモと付けただけなのだ。太ももの刺青はモモが顔も名前も知らぬ誰かの所有物にされているようで本当に気に入らないが、モモには百の字が似合っていると思う。

問題は未だに空欄になっている姓の欄だ。
どうせなら夕日の苗字である“飛鳥”になって貰いたいのだが、兄妹と思われるのも癪で、夕日は考え込む。

夕日が一人悶々と空白が埋まらない紙を見つめていると、華とのゲームの対戦が終わったらしい直人がニヤニヤとした顔で近付いて来て夕日の手元を覗き込んできた。
別に見られて困るようなものでは無いため、夕日はその紙を直人にも見えやすいように机に置いた。

「ゲッ…!
お前が珍しく悩んでんなって思ったら、またモモのことかよ…」

何か文句でもあるのかと夕日がジロリと直人に視線を向けると、直人は降参とばかりに両手を上げた。