車をしばらく走らせると学校には直ぐに着いたようで、ようやくのスピードを緩めた走行の後キュッとタイヤが音を立てて止まった。

校門近くから校舎までの間に、真ん中にだけ通り道のような場所を開け、人が並んでいるのが車の中から見える。
流石の大人数だ。

運転手に礼を言い、夕日が車のドアを開けるとまず歓声ような悲鳴が聞こえてくる。
キャーキャーと大騒ぎしているその声は、街へ夕日が顔を隠さずに出た時に聞こえる悲鳴など比にもならないぐらいに大きいものだった。

「大丈夫、これが普通だから」

先に外に出ていた夕日はモモが出やすいように扉を開け、エスコートでもするかのようにモモに手を差し伸べている。
モモはその手を掴み、ぴょんと車から飛び降りた。

ふわりとスカートが揺れる。

「えっ、?」
「あの女の子は誰?」
「どういうこと?姫が二人いるってこと?」
「まさか夕日様が……、?」
「やっぱりこの前の…」

モモが車から降りてきたことで、響いていた歓声がざわめきに変わる。

夕日はそんな反応が起こることは既に分かっていたようで、少し歩幅を早め校舎内にと向かった。

モモはいつもより早めのスピードに引っ張られながら、まだ車から降りてきていない朝日と助手席から降りてきている途中だった直人を待たなくても大丈夫なのだろうかと振り返る。
モモに気がついた直人は、慌てている様子もなく大丈夫だと言うように首を軽く縦に振った。

靴箱に着くと、見学の時に既に置いて来ていた上靴に履き替える。大量に靴箱が並んでいるため一人で来たらどれがモモのものだかわからなくなりそうだ。

真新しい上靴に足を通し、そのまま手を引かれ連れてこられたのは校長室だった。
中に入るとまた校長は大きな茶封筒から出した書類を片手にコーヒーを飲んでいる。前に見学で校舎を見に入り、挨拶のために面会をした時も全く同じ状況だったため、これが校長にとっての日常なんだと思う。

「これからお世話になります、モモです!」

モモは事前に練習していたセリフを口に出し頭を下げた。

「…あぁ、編入は今日からだったか。
天野(あまの)(モモ)

校長は、そうモモの目を見て呼んだ。