少女はしばらく呆然としていたが、 パンパンと服についた汚れを払うとまたすぐに別の人の腕を掴んだ。

「拾ってー」

「お嬢ちゃん、家出したのかい?」

次に少女が掴んだのは、少し小太りの清潔感の無いオジサンの腕だった。

だが少女はそんなの気にしないとばかりに声を掛ける。
気にしないと言うより見ていないと表現する方が正しいのだろうか。

「家出?」

「くフッ……オジサンの家に来るかい??」

「いいのっ?」

少女は軟禁されていて世間から隔離されていたとはいえ、流石に病院である。
そこで働かされていた少女には、自然とかなりの清潔感が求められているのだ。

意識のある患者の前に出される時は髪も綺麗に整えられることもあり、決して不衛生には見えないてはいけない。

つまり、だ。
簡単にまとめるとこの少女の見た目は清楚なのだ。

そんな少女は不幸なことにオジサン受けもいいようで、早速引っかかっている。
拾って貰えると嬉しそうについて行こうとする少女に、オジサンの目に欲望が走る。

「あぁいいよぉ、おいで?」

オジサンが少女の肩に手を回してベタベタと肉のほとんどついていない肩を撫で回す。

少女はなんだか気持ちが悪いような気がしてオジサンの顔を見上げた。
モヤモヤとしたものが残っている。

その場にいた誰もが無垢な少女が汚されると緊張感を抱いたことだろう。
だが現在は時間帯で言えばほとんど深夜帯であり、それ自体を目的とした取引も少なからずあるのだ。

あんなオジサンに持ち帰らせるぐらいならうちの店で保護してやろう、とキャバの宣伝をしていた女の人が踏み出そうとするのが見える。