モモイロセカイ

始めは躊躇いがちに、だが次第にゆっくりとモモの頭の感触を確かめるようにと撫でていく。

「ありがとう。
モモのおかげでなんか少し気持ちが楽になった気がする」
「ん、よかった」

体内に分泌されるコルチゾールの量が減っているので、まやかしではなく本当に楽になっているのだろうと思う。

「そういえば今更で悪いんだけど…、
珍しく夕日がいないけど、喧嘩したの?」

「ううん、モモが居たら夕日は勉強出来ないからって追い出されたの」

なんだ、と春馬は残念そうに呟く。
失礼だし、本当に今更だ。

「ごめんだけど、僕ももう勉強しないと。
相手出来なくてごめんね」
「大丈夫、頑張ってー」

春馬は再び教科書に向かったまま幹部室へと登っていく。きっともともと外に出てきたのは気分転換のためだったのだろう。
モモは、今のやり取りが春馬にとっていい気分転換になっていたらいいなと思った。

そして、少しでも集中出来るよう心ばかりのドーパミンを春馬に流し環境を整えてやった。

それがモモにできる、限りのある役に立てることだから。