モモイロセカイ

春馬は今にも泣き出しそうな顔で笑った。

「……ごめんね、ちょっと八つ当たりした。
気にしないで」

「モモはまだ全然知らないよ?
学校がどんな所で、どういう風に過ごすのかもテストも、何も知らない。
でも春馬が今必死に頑張ってることは知ってるの」

モモは戸惑ったかのように見上げてくる春馬をどうしようかと頭を回す。

あの頃カウンセリングをしていた優しい精神科の医師はなんと言っていただろうか。記憶が薄い。

「モモだって、夕日に無理やり拾って貰ったのは分かってる。多分みんなにはすごく迷惑掛けてると思うよ?
でも、その分モモも役に立ちたいから。
いつでも八つ当たりしていいよ!」

ドンと来いと言いたげにモモは胸の上を叩く。

ぽかんと口を開いた春馬は、モモの何かがツボに入ったようでずっと声を押し殺して笑っている。
おかしいな、ここはモモの言葉に泣いてストレスを発散させるつもりだったというのに。

「うーん…」

なんだか釈然としない。

「はっ…ははっ…
…ごめんね笑っちゃって。なんか、夕日の気持ち、理解出来たかも」

春馬はモモにそっと手を伸ばして来たため、モモはその手を掴み春馬の体を引っ張りあげた。

「うわっ?!」

その勢いに春馬は立ち上がって少しよろめいた。
参ったなぁと困ったように頭に手をやる春馬が言うには、どうやらモモの頭を撫でたかったらしい。

「んー、そんなに撫でたかったの?どうぞー」

「…モモ、発言がなんだか夕日に似てきてない?」

このように問いかけることで相手の意志を確認するのは確かに夕日の口癖でもある。

あまり口癖が移っていると自覚のないモモはそうだろうかと少し首を傾げ、そして春馬が撫でやすいようにと頭を少し前に傾けた。