モモイロセカイ

最も、モモがその説明を理解できたわけではないのだが。

きっと、本当に基礎から何も知らないモモへの説明なのではなく、自分が覚えているのかどうかを口に出しただけであろうから問題ない。

春馬は説明をふぅんと聞き流すモモの様子は気にも留めず、少し考えると一人で納得したかのように頷いた。

「あ、そっか、モモは期末が無いのかぁ…
いいなぁ…」

普段から能天気な春馬を、このようなボロボロの状態にする“テスト”とはいったいどれほど恐ろしいものなのか。
恐怖もあるが、それ以上にモモは一度は体験してみたいとワクワクしていた。

「もうすぐモモも学校行けるようになるって、夕日も朝日も言ってたもん」

「もしかして俺羨ましがられてるの?
テストってモモが思ってるように楽しいものじゃないよ…つらい…」

春馬はついに教科書から目を離し、頭を抱えしゃがみこんでしまった。
そのせいで目線がモモよりも低くなる。

「そうだ…。ねぇモモ、知ってる?
テストを受けたらね、まず平等なはずの人間に上下関係を付けられるんだよ。その順番が下がっただけで失笑されるんだよ、
…まるでお前には価値がないって言われてるみたいに」

それは春馬の体験談なんだろうか。

次々と言葉を募っていく春馬は、今若干精神が不安定な状態にあるらしい。モモは溢れそうなドーパミンを少し減るように押さえつけた。

「次こそはって、また受けるじゃん。
僕は期待されてるから結果を出さないと、って。必死に頑張って、頑張って、そこそこ良い点を取って…、それなのに褒めてくれないのはなんでなんだろうね」

春馬は誰に褒められたいのだろうか。心当たりを探すも、それはきっとモモが知っている人ではないのだろう。