華が姫になり倉庫に来るようになってから、もう一ヶ月ぐらいが経つ。
モモはいつの間にか書けるようになっていた三次関数のグラフを見て、にんまりと笑った。学校に行ってみたい、その一心で仕上げたのだ。

朝日がモモの書いたグラフを見る。
モモは朝日の視線を追い、自分で書いたグラフを見て、またごくりと唾を呑んだ。

突然不安になり、計算の履歴をもう一度目で追った。
合っているはずである。

「…完璧だ、よくこの短期間で仕上げたな」

「やったー!!」

モモは嬉しさのあまり、ソファーに座っていた夕日に駆け寄ると懐にそのままダイブした。
鍛え上げられている硬い腹筋にモモの柔らかな顔が負け、助走の勢いの分だけ少し痛い。

夕日は片手でもっと密着するようにモモの腰を支え持ち上げると、少し乱れたモモの前髪にキスを落とした。

「はしゃいじゃってる、可愛い。
俺と一緒に学校行けるのが嬉しいの?」
「ん、えへへ」

最近夕日はこうして突然モモにキスを送ってくることが多くなった。モモはその度にどこかにキスを返している。
モモは少し背筋を伸ばして夕日の鼻先にチュッと音を鳴らし口付けた。

驚いたかのようにパチパチと瞬きをしている夕日が可愛い。

モモはそう口に出そうとしたが、夕日の隣に置いてある新しく買ったソファーに座っていた華はそれを許さない。甘い雰囲気に嫌気がさしたような苦い顔をして、会話に割り込んできた。

「モモちゃん、今日の勉強はもう終わらせてきたんですか?」
「終わったよ!
もうすぐ華とも一緒に学校に行けるね!」

「……そうですね」

楽しみだねと笑うモモに、華は曖昧に微笑むだけだった。