――
夕日はぼんやりしていた朝日の肩をポンポンと叩く。
なんだと振り返った朝日は夕日に怪訝な視線を向けた。
「朝日、モモに絵を貰ったんだって?」
「…あぁ」
夕日が珍しくモモを連れていない。何を言い出すかと思えばそんなことか。
朝日の表情はそう言ったものだった。
「見せて」
「…見たいのか?」
夕日の視線に急かされるように、朝日はゆっくりとどこに置いただろうかとあの裏紙を探す。
案外それは近いところにあったようで、朝日は直ぐに見つけてしまった。
紙を渡したいのだが、期待するような夕日の視線を受け、本当にこれを渡してもいいのかと考えてしまう。
「それがモモの絵?」
「…」
朝日の葛藤を気にも止めず、夕日は軽く朝日の手からその二枚の紙を奪っていってしまった。
「求人…?」
ペラりと白い紙を捲った先に見えたのは病院の求人広告。
白い紙に何も書かれていないことを確認し、モモは裏紙に絵を描いたのか?と夕日はそちらに手を伸ばした。
朝日はほぼ無意識的に止めようと、その手を掴んだ。
「待て、夕日。強い覚悟を持て。
絶対にお前の想像しているような絵は出てこない」
「は?」
夕日は何を言っているのだと怪訝に顔を歪ませた。
だが思った以上に戦闘時のようなピリピリとした覇気を放つ朝日の顔は真剣で、それ以上のことは何も言えずにゴクリと唾を飲み込んだ。
朝日の手が離されると、夕日はゆっくりと恐る恐る裏紙を捲っていく。
ちらりと見えたそれは、なんだかどす黒い色をしていた。
鉛筆一本で描いてあるのか色は付いていないが、明暗がついていることはハッキリとわかった。
夕日は何も言えずに一思いに紙を裏返した。
「心臓…!?」
やけにリアルなそれは、生物の教科書に載っている模型の写真に酷似していた。
しっかりと血管や弁までをも再現しているその絵に、夕日は初めて言葉が出ないという感覚を味わうこととなる。
「ちなみに題名は“心筋梗塞を起こした心臓”らしいぞ」
「…本物は見たことないけど、きっとかなり本物に近いと思うよ…」
夕日はそっと絵の端の方を指でなぞってみた。
絵に触れたところには鉛筆の黒鉛が付着し、その絵が本当にモモが描いたものであることを主張する。
「俺はモモには絵の具を近付けないようにしようと思うんだが…、
お前も協力しろ」
「…俺もそうした方がいいと思う」
夕日は見る度に赤色が透けて発色して心に訴えてくるようなその絵から目を逸らし、そっとひっくり返した。
――
夕日はぼんやりしていた朝日の肩をポンポンと叩く。
なんだと振り返った朝日は夕日に怪訝な視線を向けた。
「朝日、モモに絵を貰ったんだって?」
「…あぁ」
夕日が珍しくモモを連れていない。何を言い出すかと思えばそんなことか。
朝日の表情はそう言ったものだった。
「見せて」
「…見たいのか?」
夕日の視線に急かされるように、朝日はゆっくりとどこに置いただろうかとあの裏紙を探す。
案外それは近いところにあったようで、朝日は直ぐに見つけてしまった。
紙を渡したいのだが、期待するような夕日の視線を受け、本当にこれを渡してもいいのかと考えてしまう。
「それがモモの絵?」
「…」
朝日の葛藤を気にも止めず、夕日は軽く朝日の手からその二枚の紙を奪っていってしまった。
「求人…?」
ペラりと白い紙を捲った先に見えたのは病院の求人広告。
白い紙に何も書かれていないことを確認し、モモは裏紙に絵を描いたのか?と夕日はそちらに手を伸ばした。
朝日はほぼ無意識的に止めようと、その手を掴んだ。
「待て、夕日。強い覚悟を持て。
絶対にお前の想像しているような絵は出てこない」
「は?」
夕日は何を言っているのだと怪訝に顔を歪ませた。
だが思った以上に戦闘時のようなピリピリとした覇気を放つ朝日の顔は真剣で、それ以上のことは何も言えずにゴクリと唾を飲み込んだ。
朝日の手が離されると、夕日はゆっくりと恐る恐る裏紙を捲っていく。
ちらりと見えたそれは、なんだかどす黒い色をしていた。
鉛筆一本で描いてあるのか色は付いていないが、明暗がついていることはハッキリとわかった。
夕日は何も言えずに一思いに紙を裏返した。
「心臓…!?」
やけにリアルなそれは、生物の教科書に載っている模型の写真に酷似していた。
しっかりと血管や弁までをも再現しているその絵に、夕日は初めて言葉が出ないという感覚を味わうこととなる。
「ちなみに題名は“心筋梗塞を起こした心臓”らしいぞ」
「…本物は見たことないけど、きっとかなり本物に近いと思うよ…」
夕日はそっと絵の端の方を指でなぞってみた。
絵に触れたところには鉛筆の黒鉛が付着し、その絵が本当にモモが描いたものであることを主張する。
「俺はモモには絵の具を近付けないようにしようと思うんだが…、
お前も協力しろ」
「…俺もそうした方がいいと思う」
夕日は見る度に赤色が透けて発色して心に訴えてくるようなその絵から目を逸らし、そっとひっくり返した。
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