モモイロセカイ

それがわかっていないモモは、朝日が長文を喋っていると珍しい光景に目をぱちくりとさせていた。

「姫とは言っても、常にうちのチームの誰かしらに送迎されて放課後に少しここに集まるだけだ」

朝日の言葉に確かにどっちにしろ狙われるかと納得しているようだが、何故だか華はモモを気にしているようでチラチラと視線を送ってくる。

「…モモちゃんはいいんですか?」
「?」

「モモちゃんは姫になりたくは無いんですか?私が姫を奪ったみたいになるのは嫌ですし…」

「どっちでもいいー。モモは夕日に拾って貰ったもん」

「えっ、いいんですか……?」

モモとしては姫になってもならなくても倉庫に居させてもらえるということを伝えたかったのだが、モモと関わった時間もまだ短い華にはあまり伝わってくれない。

逆にどうしてモモに、華が姫になるのが嫌だと止める権利があると思うのだろうか。

夕日はモモを姫には絶対にさせないと朝日に睨みをきかせたが、朝日は知らん振りを決め込んでいる。

「モモちゃんがいいのなら…受けようと思います」

「そうか。しばらく男どもに張り付かれて窮屈に感じるかもしれないが、我慢してくれ」
「えっ、朝日様たちの誰かじゃないんですか?!」

華の言葉に、しばらく傍観を決め込んでいた直人が飲んでいた水を吹き出す。

「ゴホッゴホッ…お前、なかなかに図々しいな」

「えー、でも仲良くなった人からはそう言われることが多いかもです」

暗に自分達も仲良くなっているんだろう?と問う華は、きっと図々しいのではないかとモモも思う。

それ以上に彼女がいたら楽しそうだ。

「むー、モモも学校行きたいー」

「もうちょっと待ってねー、今理事長に掛け合ってる」

モモは華と夕日と、みんなと学校という学舎に通うことができる日を夢見た。
きっとそれは、この上なく幸せで楽しいんだろうなと思いながら。

「学校行くまでに三次関数は終わらせるぞ」

「んーん!」

モモに、途中まで解いた一次関数のテキストを差し出し、朝日は続きをやれと促す。