モモイロセカイ

今日は朝日がモモについていてくれる日だったようで、幹部室は静かだ。
朝日はあまり自分では話さないタイプで、モモは基本的には一人でできることしかすることがない。

そこで暇つぶしに最近モモが目をつけたのが夕日たちの高校で使っている教科書だ。
モモは学年が上がるにつれ要らなくなった教科書の何冊かを夕日に譲って貰った。

モモは初めて掛け算で用いる九九を知った時に、そんなに簡単に計算ができるのかと感動した。
それと同時に一緒に働いていた医師が、あんなに早く計算ができていたのはこのためかと納得させられる。

ようやく一次関数まで進んだのだが、なんだかどうしてもやる気が起きない。

別にモモにとってホルモンバランスを少し弄り、集中できる空間を作り出すことは容易なのだが、普段の生活でその技を使うほど一次関数は大切ではない。

そんな時にはリフレッシュがいいと、モモは知っているのだ。

「お絵描きするー」

お絵描きはモモの得意分野でもある。

モモの計算用紙用にと、チームの下っ端も含めみんなで大量に用意してくれた裏紙から一枚をそっと引き抜いた。

手始めにモモは紙に大きく丸を描く。

「何を描くつもりだ?」

「当ててみて!」

眠っていた朝日はいつの間にか起きてモモの手元を覗き込んでいた。

モモは大きな丸を右下が大きくなるように四分割する。

「なんだ、ケーキか?」
「ぶー!」

次に描くのはまるで何かの通り道(・・・・・・)のようにも見える二本の線だ。よく見るとハの字になっている突起のようになっている部分もある。

「…」

モモはそこから先ほど薄く書いた丸の上から濃く輪郭を縁取った。