モモが呆れられたかなと考える暇もなく、ベッドから起き上がった夕日はモモに抱きつく。

「あーー…、モモ、可愛い。
その服もやっぱり似合ってるよ」

「夕日も可愛い!」

「そう?…え、可愛い?俺が?」

モモは、可愛いの意味を愛おしいの延長だと捉えていた。だからこそ起こってしまった、悲しみのすれ違いだ。

夕日ははっきりと言われた可愛いの言葉にショックを受け、また戻るようにベッドにどさりと横になってしまう。

「んん?」
「モモから見て、俺は可愛いの…?…かっこいい、じゃなくて?」

「夕日は可愛い、それにかっこいい!」

よかった、かっこいいより可愛いって言われたらどうしようかと思った。
夕日はモモが起こそうとして差し伸べた手を引っ張り、モモをベッドの上に倒した。さらに追い討ちをかけ、巻き寿司のように布団でくるんだ。

パシャ

「あ!また写真撮った!」
「モモが可愛いのが悪い」

夕日は普段はスマホのシャッター音を鳴らないように設定しているが、たまにシャッター音をわざと鳴らしてモモに気づかせることがある。
明らかにモモを揶揄っての行動なのだが、モモの反応と撮れる写真のどれもが、可愛さが増すので重宝している。

モモはテレビのコマーシャルで女優がやっていたように両手で頬を包み込むようにポージングをとった。

パシャ

夕日は恐る恐る出来上がった写真を見る。

「は、視線逸らすのあざとすぎ」

「んー!」

夕日はその写真を無言でスマホのロック画面に設定した。

朝ごはんを用意してくれたようで、玲がモモたちを呼ぶ声が聞こえる。モモは夕日の手を引っ張り笑顔で駆け出した。