夕日はどちらかと言えば性欲は強い方ではあるし、好意を持っている人からキスをされ気分が高まっている時にわざと自らを律するドMでも無い。
それでもキスを拒んだのは彼の純情な思いからであった。

曖昧な気持ちでいて、モモと体だけを繋げるセフレになるのは嫌だった。

モモは夕日のことが好きだと、夕日もそう思っていた。それは日頃の距離感からも伝わってくる。
だが、モモはきっと朝日や直人にも同じ好きという気持ちを向けているのだと思う。

「正直モモが俺の事を親扱いしてるんじゃないかって疑ってる」

「ありそー。さっき聞いたら俺にもキス出来るみたいなこと言われたし」

「は?死ねよ」

直人は夕日の表情を見て、またゲラゲラと笑う。

俺だけに好きと言って欲しい。
俺しか見えなくなってしまえばいいのに。

この体が俺の体にしか反応出来なくなればどれほど嬉しいだろうか。

モモはそんな考えを抱かれているとは知らないで、完全に安心しきった顔で眠っている。

夕日はティッシュを素早く取ると、モモの口周りを汚すキスで溢れた唾液を拭い去った。

「あーーー…
抱きてぇ…」

学校の女(ハイエナ)どもに、お前の甲斐甲斐しい姿見せてやりてぇわ」

ドラマはいつの間にか終わっており、テレビからは特に面白くもないコントが流れている。
二人はしばらくこの静寂な空間で、テレビから流れるコントを無心に見つめていた。

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