モモイロセカイ

食事も終わった夜。

それぞれが玲はノートパソコンを弄り、朝日は治安維持の為の巡回に行っているらしい。また、春馬はどこかへ一人で出かけたようだ。
巡回かと問うと否定していたため巡回ではないのだろう。夕日も誘っていたが、夕日は気分じゃないのか一緒には行かないらしい。

それぞれが好きなことをしている空間についたテレビには、春馬が付けて行った最近流行りの(・・・・・・)ドラマが映し出されている。

女優のビンタから始まったそのドラマは、前回を見ていないモモにとって、よく理解できないものだった。

ボロボロと泣き崩れる女優に、俳優がそっとその涙に唇を触れさせる。
少し顔を傾けた女優が目を瞑り、キスを受け入れる体制をとる。

そして気がつけば濃厚なキスシーンとなっていた。

「チッ、春馬の野郎こんなヤツ仕込みやがって…」

これには直人も苦い顔だ。

どうしてかモモにはこのシーンをしてみたいという欲が出来上がっていた。
どちらかと言えば、今まで感じていた欲がキスと言う明確な形を持って現れたという表現に近い。

モモはそんなに興味も無かったドラマからは完全に目を離し、ソファーに夕日を跨いで膝を立てる。

「モモ、ッ?!」

そしてそのままモモは上から夕日の唇をふさいだ。下唇を食むように舐めると、夕日は動揺しているのか唇を開いた。

舌で歯の裏側をなぞって感覚を刺激してやる。

モモは先程ドラマであったシーンを再現するように舌を夕日のものに絡ませた。

キスをした。
それだけの事であるのに、モモの体は満たされたかのようにふわふわと暖かくなる。

きっとこれは幸せホルモン(セロトニン)だ。