夕日がしばらくした所で止まったため、モモが女に近付き、しゃがみ込んだ。

「大丈夫?」

「はい…、ごめんなさい…!助けて下さって、ありがとう…ございます」
「ん」

モモは女の散らばった下着や服を拾ってゆっくりと身につけるのを待ち手渡す。

女はワイシャツを来ていたのだが、ボタンがいくつも取れており、更には布が破けている場所もあるため、見るからにボロボロの格好だ。
明らかに外を出歩けない格好で気丈にも女は家に帰ろうとしている。

夕日が近付いて来ようとした時、モモはスウェットの中にもう一枚インナーを着ていることを思い出した。

両手を服の裾に掛け、引っ張るように脱ぐといとも簡単にスウェットは脱げた。

「モモ?!」

そのままスウェットを女の頭の上から通すように着せてやる。

「あげる」

「焦った…
インナー着てたの」

夕日は心臓に手を当て、本気でホッとした表情をしていた。

「っ…ありがとう、ございます…!」

女の目にはじわじわと涙が浮かんでいた。
モモはどうしていいかわからず、ただその手を握っていると次第に女は嗚咽を上げ始めた。

「…あぁ、俺だ夕日。ごめん、少し遅れる…うん、それでお願い」

夕日は車に少し遅れることを伝えたらしい。

「ヒクッ…怖かった…ヒクッ…、は、初めて…だったのに…」

女はしゃくりあげながらモモに何かを訴えかけてくる。モモはただ、その手を少し強く握った。

「すびません…迷惑かけて…ズビッ」
「ごめんね、モモ、ティッシュ無い」

女はしばらく泣いてようやく落ち着いたようだ。

「襲われてすぐでごめんだけど、襲われた相手に心当たりはある?」

「…はい。あの、私の知り合いではないので多分なんですけど、
…“青鷺”のメンバーです」

夕日はその名前を聞いて息を飲んだ。

「少し知っていることを聞かせてもらってもいい?」
「えっ?」

女は少し躊躇った後にゆっくりと頷いた。