駐車場まで行くのに、路地裏を通って近道した方が早いらしい。

モモから見ては全部同じにしか見えない道を、全て見分けているようにスイスイといとも簡単に通っていく様子には流石だと思わせられる。

モモだって病院の内側であればどこに居たって全部わかっている。

そんなことを考えていたモモはむぅ…と唸ってしまう。

そこでふと夕日は足を止める。
いきなりの事でボーッとしていたモモは、顔面から夕日の背中にぶつかってしまった。

「あうっ」

「見るな。
…モモ、この荷物を持って、しばらく目を瞑ってここに座っていてくれない?」

「なぁに?」

モモを振り向いた夕日に大丈夫だと諭され、モモはその場にしゃがみこみ目を塞いだ。トサッと、モモの近くに紙袋が置かれるのを感じる。

視覚が働いていない分、聴覚が鋭くなったようで、今まで入ってこなかった音が大きな声だけがうっすらと聞こえるようになってきた。

それは男女の声のようで、なにやら揉めているらしい。

「…おい、抵抗すんなっ、って!」
「辞めて…やめてくださいっ!助けて、誰か!!」
「クソアマッ!!」
「誰か…!!助けて、ください!!」

ドガッ!と大きな音が鳴り響きモモは夕日は大丈夫だろうかと身を小さく固めた。

「…あん?ハハッ、なんだ。お前も入れるかぁゴッ!?」

「…お前、二度とこんなことすんじゃねぇぞ」

夕日の声だ。
良かった、無事らしい。

視界が見えていない分、不安だけが溜まっていく。

足跡がトントンと近付いて来た。

「モモ、もう見ても良いよ」

ハッと顔を上げると上から下までを怪我していないかを確かめる。
どこにも傷はない。

モモはそこで心底安堵した。

「良かった…、怪我ない。大きい音鳴って、怖かった。
男の人と女の人喧嘩してた?」
「えっ、聞こえてたの…?」

「ん、ちょっとだけ」

夕日に導かれるようにそちらへ向かうと、服がボロボロになった女が震える足で立とうとしている所だった。

下着が地面に落ちているのを見て、どうやら酷い喧嘩をしたのだなとモモは考える。