モモイロセカイ

それほどの衝撃もなく軽く少女を受け止めた2603番は、しばらくジッとしているとそろそろ離してくれと少女の背中を二度叩いた。

どこから見ても細身の2603番が少女を軽く受け止めたのも、決して彼に筋肉があるからでは無い。
ただ少女の体重が軽すぎただけである。

「お前軽いぞ、もっと太れ」

「えー、大丈夫!リンもカルシウムも鉄も、ぜーんぶちゃんとあるよ!」

言葉が拙い割には過度な人体に対する知識。
少女にはそのアンバランスさが際立っている。

とは言っても、理由もなしにずっと閉じ込められていたのではない。

少女には生まれたその時から異能と呼ばれる力があった。体を外側から意図的に操作する力、それは病気を治したりすることも出来るため治癒の力と呼ばれている。

そして、少女が閉じ込められている場所はとある病院の一室である。普通の病室からは隔離された病院の一番内部にあるところ。

少女の力が権力によって利用されているのは言わずともわかるだろう。

2603番は最低限の栄養分のみを体に蓄えている少女に同情し、足りていないのは脂肪だよとため息をつく。

まぁいつものことである。

「仕事だ……」
「うん!」

少女の所まで回される患者はほとんどが意識のない、もしくは治る見込みのない患者だ。
酷い時には事故にあって腸や内臓の飛び出た人が来たこともある。

気がついた時には色々な耐性が出来ていた。

少女はそんな彼らにペチペチと触り、あらゆる部位を少しずつ細胞を活性化させ健康な状態を作っていく。
少女の部屋に置かれていた大量の人体解剖学の本はそのためのものである。