モモイロセカイ

脱衣所に出ると上下のスウェットと上に達筆な字で書かれたメモが置いてあった。
モモの着ていた服は洗濯に回されたらしい。このメモは玲が置いていってくれたようだ。

「うーん…」

それはそうと下着がない。
まあ少し心許ないが別にいいだろうとスウェットを身につけ、ズボンの腰周りを強めに括るとモモは脱衣所を出た。

「あ、モモもう起きてたの?早いね」
「おはようー!」

「…はよ」

春馬と直人も起きてきたらしい。
二人は次シャワー室をどちらが使うかを競ってジャンケンしている。

「はよー、モモ」
「おはよー、起きた!」

夕日も起きたようだ。

夕日は壮絶なジャンケンの戦いを繰り広げている春馬と直人の存在には目もくれず、
シャワー室のドアを閉めた。

「ちょっと夕日?!僕が次シャワー使おうとしてたんだけど!」
「はぁ?お前ふざけんな!俺だっつーの!!」

「んふふふ」

ここは賑やかで楽しい所だ。
拾われて1日足らずでモモはもう満足していた。

ニコニコとやり取りを眺めていたモモを玲が呼び止めた。

「モモさん、昨日聞くことが出来なかったことなんですけど今聞いてもいいですか?」

「ん!いいよ!」

モモは昨日のソファーのところまで連れていかれると、玲の対面に座る。
このソファーは腰を落とすとモフッと沈み込むいいソファーだが、人をダメにするソファーでもある。

「私は本当に夕日の記憶が正しいのかを疑問に思っておりまして…
本人からは後頭部を殴られた、腹を何度も蹴られた、腕は折れてたかも、と聞いています」

「?ん!」

どうやら玲は夕日の怪我を本物だとは考えていないらしく、作られたものだと考えているようだ。
確かにその仮説は本物の怪我が瞬時に治ることよりもよほど信じやすいかもしれない。