モモイロセカイ

次の日、モモが目を覚ますと既に日は空の頂上を過ぎていた。

六時間程眠っていただろうか。
夕日の上で寝落ちしたように眠っていたので、いつの間にか横になってベッドに寝かされていたことに驚きを隠せない。

クーラーの効いた部屋は少し寒く、モモは触れる暖かな存在に擦り寄った。

「んー」

夕日は本当に優しいと思う。
あんなに押し付けるように自分を拾わせたというのに、モモの立場が悪くならないよう色々気を使ってくれていることは世間を知らないモモにもよく理解できた。

いつもの無機質な部屋とは違う、暖かさのある部屋。

モモはなんだか嬉しくなって、暖かい夕日の背中にギュッと抱きついた。

「…ぅぅ、ん」

モモに抱きつかれても夕日は声を漏らすだけで起きる気配は無い。

しばらくして、もうとっくに起きていたらしい玲がモモに気が付いた。

「おや、モモさん。目覚めましたか?」
「ん、おはよう、おはよう!」

「おはようございます」

やっぱり挨拶を返してくれるのは嬉しい。

そこで少女は、自身の着ていたはずの白衣が脱がされていることに気が付いた。

「あ、すみません。
モモさんの白衣なんですけど、夕日の血が着いてしまっていたのでこちらで洗濯しておきました。
それと、シャワー室があるので、もし使いたければどうぞ」

少し体がベタベタするので、モモはありがたく借りることにした。

シャワーを頭から被ると、なんだか生まれ変わったような気持ちになれるから好きだ。
シャンプーのボトルを遠慮なく押すと、病院で使ってたものよりふわりとした清涼感のある香りがする。

「ふんふーんふんふんふん」

アワアワと髪の毛で泡立てていき、もっこりと上にまとめてる。

「んふふ」

図鑑にこんな鳥が載っていたような気がする。

モモは再び頭からシャワーを被って泡を流した。