また騒がしくなろうとするその場を、朝日は軽く指先で机をトントンとするだけで落ち着かせる。
それは正に王者の風格だ。

「まだ青鷺だと決まった訳じゃない。
下にはしばらく見回りの時には一人にならないよう気をつけるように通達する。それでいいか?」

「構わない」
「おっけー!」
「おう!」

それで、としばらく黙っていた玲が口を開く。

「夕日の傷は…
一体どんなカラクリなんでしょうか?
見たところ服は酷く損傷していますが、正直余り大した怪我には見えません。頭部の出血も完全に止まっているようですし」

「あ、それ僕も気になってたんだよね!」

夕日は説明しにくい事を聞かれたとばかりに困ったように、少し長めの髪を耳にかける。

「意識がほとんど落ちてた時に、モモがいきなり俺にのしかかってきて拾ってくれと言って来てなぁ。
んで押し売りみたいに俺の治療してった」

「えっと、何から言えばいいのか…。
意味がわかりません。まず貴方がいくら通常の人間より回復力が高いからといって、そんなに早く治るなんて有り得ないですよ」

「ありえないよなぁ…」

本気で訳が分からないといった様子の夕日に、玲は聞き出すことを諦めたようだ。

「これはモモが起きたところで聞きましょうか。
それではもう議題がないなら解散でいいですか?」

この日はこれで解散となった。
朝日は未だに下で待機している男たちに通達を出しに行き、残りのメンバーは幹部室に備え付けてある仮眠用のベッドにそれぞれ向かった。

疲れがドッと来ているため、シャワーは明日でいいだろうなどと考えながら。