「名前は?」

金髪の男が少女に向かって話しかけているのがわかる。
でも、名前とは何のことだろうかと内心首を傾げる。図鑑には名前の所に種小名が書かれていたのでもしかすればその事かもしれない。

「ヒト……?」
「は?」

違っていたらしい。

「……今までなんと呼ばれていた?」

少女の返答に呆れたのか、背後からクロヒョウを思わせる男が少女に問う。

「ん、100番!」

「あ?それは名前じゃねぇだろ」

少女は首を傾げる。
本当に名前の意味がわからない。

だが少女は自身が100番であることを証明する術は持っていた。
少女は白衣の前をくつろげるとザッとハーフパンツを脱ぐ。

「オイ!!」
「っえ?」

少女の白い太ももがその場に晒されようとした時、クロヒョウを思わせる男は背後から慌てて白衣ごと少女を抱きしめ動きを押さえつけた。

その場では様々な怒声や困惑した声が飛び交う。

「ソイツなんなんだよ!!いきなりズボンなんか下げて!痴女じゃねーの?!」
「ちょ、バカ!直人は黙って!」

今まで発言せずに少女を観察していた男が思わずと言ったふうに叫んだ。

「一旦話すのをやめろ」

ライオンを思わせる男がそう声を上げると、その場は一瞬で静まった。

今少しだけ百獣の王の輪郭が見えたかもしれない。

「お前、何を伝えたかった?
後ろの男だけに見せてみろ。それでいい」
「は?!」

少女はくるりと後ろを向き直る。
少女の白衣の前のボタンは既に外されており、ハーフパンツもほとんど脱げかけていた。

「100番。ね?」

男ゆっくりと、視線だけを少女の指し示す所へと向けていく。

もはや安心出来るぐらいに色気のない白いパンツに、頼りないぐらいに白く細い太もも。
その内側の付け根には黒で文字が刻印されていた。