後部座席が開かれると、少女を連れた男は一瞬で屈強な男たちに囲まれた。

「夕日、無事か!」
「夕日様!!」

「無事だ。心配をかけてすまない」

「夕日さまぁー!!良かったぁぁ!!」

泣いている者もいる屈強な男たちに囲まれるという初めての体験に、押しつぶされそうになり少女は助けを求めるように男の手を強めに握った。

「悪い、幹部部屋で話し合わないといけないことがあるんだ」

「もしかして、そのチビのことっスか!?」
「あぁ。
後で相手してやる」

「うぉぉおお!!!」

少女は男に連れられ階段を登る。
階段を登っている途中で、ふわりとあくびが出た。倉庫の中にかけてあった時計は既に午前5時を指しており、外からは朝日の明るい光が差し込んでくる。

「眠いのか?」
「んー」

肯定とも否定とも言えない返事に、男は微笑ましいと言うように僅かに口角を上げる。
男は普段は余り表情筋が仕事をしないタイプのようである。常に面倒くさそうな表情をしており、余りその表情は変わらない。

ふわりと侵食してくる眠気を紛らわせるために踊り場から下を見渡してみると、先程までは見えなかった男たちの髪色が鮮明に目に入ってきた。
金髪茶髪赤髪など中々にバリエーションも豊富だ。

「金はライオン。茶色はヒグマ?」

なんて、よくわからないことも口に出してみる。

「アレがライオンに見えるのか?」
「うーん」

「アイツの方が余程獅子(ライオン)に見える」

男は口角を上げていたような気がする。
少女はいきなり視界がふわりと浮くのを感じた。男に抱き上げられたのだ。

少女はどうしようもなく手を腹の上で組んだ。

長かった階段は瞬く間に無くなり二階についたらしい。