モモイロセカイ

案の定男はすぐに立っていられなくなったようで、担いでいたモモごと床に崩れ落ちた。
モモは背中から落ちたようで一瞬息が詰まったが、機能的にはどこも問題ないようだ。

華は二階堂がいるのも構わずにモモに駆け寄ってくる。

「…これはこれは。
前にもありましたね。彼らの状態はすぐに回復したようですが」

きっとそれはモモが病院を抜け出した時のことを言っているのだろうと思う。

「…ちょっと低血糖なだけ」
「おや、インスリンですか」

夕日がモモを呼ぶ声が聞こえた。
二階堂は仕方ないとため息をつき、もう一人のサングラスの男に倒れた男を持たせた。そして男の口の中に飴玉を突っ込む。

初めから二人はボディーガードなどではなくモモを連れていくために使う予定だったのだろう。

二階堂たちは夕日たちとは鉢合わせたくないらしく、すぐにどことなく姿を消した。
店を出たのか客に紛れたのかもわからない。

「モモ、大丈夫?!」

夕日は肩で息をしており、急いで来てくれたのだろうと思うと嬉しくなる。

モモは床から起きあがろうとするも、手足が震え力が入らないことに気がつく。
まずはとモモを立ち上がらせようとした夕日だが、モモが震えていることに気がつくとそのまま腕に座らせるようにして抱き上げる。

「ちょっと、びっくりしたかも…」

「震えてる」

モモが落ち着くためにも、また抱き上げられた時のバランスを取るためにもモモは夕日にしがみついた。
震えてる腕で力は入らないができる限りの力を込めてギュッと抱きつく。

できる限り何も考えないように細く長く深呼吸をし、呼吸と精神を次第に落ち着かせていった。

「ごめんね、さっき店を出た怪しい奴がいたからつけてたんだけど逃げられちゃった」

春馬は二階堂を追いかけていたようだ。