モモイロセカイ

それにしても遠慮なく体重を掛けて乗りあがってくるこの少女は一体何者なのだろうか。拾ってくれと言っているから、家出か何かをしたのだろうか。

「痛いー？」
「……」

「治したら拾ってくれるー？」

治したら拾ってくれる？

まるで少女が怪我を治せるという前提で行われる話のようだ。理解が追いつかない。

「あ、03番のっ……！」
「…」

「これあげる！……から？拾ってくれる？」

これがあったかとばかりに、少女は白衣のポケットをゴソゴソと探ると、四つ折りにしていたそれをペラペラと広げ男の顔の前に広げた。

「…おいそれ金でしょ。やめて、閉まってくれる？」

「好きなものと交換出来る、言ってた」

男は一つ、ため息を着くと少女の手から札を取り上げ強引に白衣のポケットにそれを突っ込む。
片手は動かないというのに器用なものだ。

「むぅ」

「わかったって……
拾ってやるから、まずは退いて」

「ほんとっ？！
待って、動きやすくする！」
「おいッ」

ペチペチペチ。

少女はまず、色が青紫色になっている男の引き締まった腹をペチペチと叩いた。
酷く破れていた血管がある程度修復される。外に漏れてしまった血はそれほど害にならないためそのままでもいいだろう。

次に少女は男の頭の切れた部分を、ポケットから出した使い捨ての消毒用のコットンで消毒し、切れてしまった細胞同士を繋ぐようにキュッと摘む。
指でトントンと細胞に司令を与えると、組織はいとも簡単に役割を思い出したかのように繋がった。

やはりアルコールが染みるのか男からは苦しげな声が漏れる。

「我慢、我慢ー」