モモイロセカイ

デートは男女のペアで出かけることらしいから、あながち間違っている訳ではないと思う。

「おいで」

夕日はモモを設置してあったソファーに座らせると、モモの比較的長めの髪の毛を丁寧に指で梳いた。

どうやら髪を結ってくれるつもりらしい。

「ねーぇ、ちょっと目を離した隙にイチャイチャしないでくれない?」

「倉庫でもこんな感じなの?」

春馬は聞いてくださいよ!と先輩らしい店主に詰め寄っていく。
なにやらモモと夕日の倉庫での様子を事細かく語っているようで、モモはなんだか気恥ずかしくなって俯いた。

「モモ、動かないで」

髪を結ばれていたんだった。
思い出すとハッとして顔を上げる。

「それで、モモちゃんは姫にはしなかったんだ?」
「モモは俺の物ですから」

食い気味に発された夕日の言葉に、店主はお熱いねぇと口笛を吹く。

夕日はモモの毛を結い終わったようだ。
二本に分けて結われた三つ編みは、後頭部の所から複雑に編み込まれている。

夕日の最近のお気に入りはこの髪型のようだ。
シャワーを浴びる時に外すのが大変だが、可愛いので仕方がない。

久しぶりに合った先輩後輩が談笑しているのを見て、モモは暇そうな華をの手を引き飾られているケーキに近付いていく。

「華の好きなモンブランあるよ」
「…私、モンブラン好きって言ったことありましたっけ」

モンブランを前にした時に幸せホルモン(セロトニン)の量が多くなっているため、わざわざ聞かなくとも明らかであるだけだ。