モモイロセカイ

説明はされたのだが、正直暴走族とはどういった存在であるのかがわからないのも事実だ。
でも彼らは一つのグループであり、それぞれの役割を持ってして色々と行動を起こしているということは見ていればわかる。

彼らに助けられたのは確実にモモや華だけではないのだろうから。

先代というときっと同じような組織で動いていた人達なのだろう。
だから作るケーキも美味しくなるのだろうか。

「凄い!」

モモがそう言うと、春馬はモモを見て心底眩しそうに目を細める。

「モモは暴走族がパティシエになることがおかしいとは思わないの?」

春馬はモモがそう思ってはいないことを確信しているのだろう。

それでも問いかけるということは明確な答えをモモの口から聞きたいと欲しているらしい。
こんなことを世間知らずのモモに聞くのもどうかとは思うが、モモは春馬の信頼に応える他ない。

「直人だって料理出来るよ?」

モモの知らない所では、暴走族がケーキを作ったり料理をしたりすることが変だと言われているのかもしれない。
きっとそれは先入観だ。

春馬はモモの言葉に満足そうに笑った。

ケーキ屋に入ると、甘いクリームの香りと心地よい冷房が同時に襲って来る。
ガラス製のケースの中に飾られるように置いてあるのは、色とりどりのケーキで綺麗にずらりと陳列していた。

「わ、ケーキいっぱい!」

モモがキラキラと目を輝かせると、夕日はモモの被っていた帽子を脱がせポンポンと頭を撫でてくれる。
いらっしゃいませと呼ぶ店員の声が聞こえる。

「春馬と夕日じゃん。今日は二人とも女連れでデート?」

店の奥からちらりと顔を覗かせた店主は、やってきたのが後輩だと気がつくと奥からそそくさと出てくる。

「ちがっ」
「そうなんですよね!
こっちが姫の華ちゃんで、こっちがモモ。よろしくしてやってください!」

華は否定しようとしたらしいが、春馬に遮られて黙っている。