モモイロセカイ

相変わらず外は暑い。
今日はケーキ屋までは歩いていくつもりのようで、涼しい車を頼ることは出来ない。

モモは、珍しくパンツスタイルを着て来たのが間違いだったかもしれないと早くも思っていた。
熱を逃がそうと体が出した汗を服が吸ってしまい気持ちが悪い。

そして信号待ちの時に、ついに生まれた時から室内育ちであったモモに限界が訪れる。

どうにかして直射日光だけでも避けようと、モモは背の高い夕日の影に収まった。

「可愛い。そんなに暑いの?」
「あつーい…溶けそう…」

「店に着いたら髪の毛まとめてあげる」

モモの下ろしたままの髪の毛がよほど暑そうに見えたのだろうか。
夕日は最近はモモの髪型アレンジがお気に入りのようで、何も無くとも暇さえあればモモの髪を弄り三つ編みを量産しようとする。

三つ編みでもいいのだが、首筋に当たると暑いのでお団子にして欲しいとリクエストをすると、夕日はまた今度とモモの手を引く。

どうやら信号が変わったようだ。

「今日は帽子があるから無理」

それは仕方がない。

モモが信号を渡りきった後でも、繋がれた手は離されない。
体感的に暑いので離したいとは思うが、モモは夕日に手を繋がれると気持ちがふわふわと高ぶるので何も言わないでいる。

ふふふとモモは笑い、夕日の影から出ることも構わず横に並び繋がれた手を振った。

「そういえばモモはケーキ屋行くの初めてだよね?」
「ん!」

「あそこの店主、俺らbeingの何代か前の先代なんだよ?」

夕日達は何代かに渡って継がれている暴走族であるらしい。