服を着てメイクを済ませた時には車は既に走り出していた、
助手席に座り、カップホルダーで湯気を放つコーヒーを手に取った、
「まだちょっと熱いから気をつけて」
頷いて、何度も息を吹きかけ一口啜る、「うん、甘さが絶妙」これも私好みだ、
「翔琉は本当に私のことをなんでも知ってるんだね、つくづくそう思った」
「勉強より力を入れてたから」
「はははっ、それは嘘じゃない気がする」
でもさ、時が経てば考え方も答えも変わるよ、
「じゃあ問題です!」
「ポテチは今年で何歳になるでしょう」
「それは難しいな、うーん、9歳じゃないか」
「おー、あってる、あってる、すごいじゃない!」
じゃあ、
「私の嫌いな言葉は?」
「愛してる」
「ブーーー」
「なんで、正解だろ!」
「少し前から答えが変わったの! 言い方を変えてもう一度聞きまーす、
わたしの、好きな言葉は?」
「あ、愛してる?」
「名前がない!」
「ゆ、結衣、愛してる」
「正解ー、翔琉、ご褒美にキスしていいよ」
「は? お前がして欲しいんだろー」
「へへへ、バレたか」 甘えたくなって翔琉の腕にしがみついた、
「危ないから、ちゃんと座ってて!」
「は、はい……」
調子に乗って怒られちゃった、、
窓を開けると、都会とは違った汚れのない新鮮な空気が車内に流れ込んでくる、
大きく息を吸って、人生で初めて感じる一番幸せな時間を噛み締めた。
更新されていく一番幸せな時、もう何回目だろう、きっとこの先も、
もっと幸せな時を感じる出来事が、私を待っている。



