ハイビームに照らされた遥か先の道路を野良猫が悠々と横切っていく、
それを見てアクセルを緩めた、猫ちゃんを轢いたら二度と立ち直れない、一生夢に見そうだ、
「毎朝さ、鏡を見てため息をつくんだよ、
ブスじゃないと思うけど平凡だなって、勉強も標準、運動も大して得意じゃない、人に自慢できるものは何もない、超がつく平凡な女の子だよ」
「それの何がいけないの? 俺はそんな結衣が大好きなんだけど」
それが私には信じられないの!
「高校生の時だって私より可愛い子がたくさんいたでしょ、翔琉はモテたからいくらでも乗り換えることができたのに、告白されてから別れるまで、どうして私なのか理解できなかった」
「結衣ッ‼︎」
「わっ! もうー急に大声出さないでよ、危ないでしょ!」
「俺はお前が一番可愛いと思っていた、今でもその気持ちは変わらない」
まるで時を飛び越えたかのような翔琉の言葉が嬉しかった、嫌いになって別れたわけじゃないもんね、
こんなに、私を愛してくれる男性はきっとこの先現れないだろう。
本音は翔琉と一緒になれたらって思う、
私に足りない何かが見つかれば、彼と同じ人生を歩いて行けるのだろうか、
「たしかこの辺だったね、こんな時間に帰って家の人に怒られないの?」
成人になったとはいえ、まだ学生の分際で酔い潰れるのは誉めたもんじゃない、
「今は姉貴と二人暮らしだから、誰も何も言わないよ」



