水星の女神(マーキュリー)って、せんっ……雫に激似っ」
「……言われてみれば、雰囲気が似てるかも」

ストレートロングで、ちょっとクールな目元がね。

「でも、私あんなにグラマラスじゃないよ?」
「そうっすか?」
「……見なくていいって」

え、ちょっと、やめてよ。
確認するみたいに、視線が胸元へと落とされた。
思わず体を捻って胸元を隠す。

やっぱり男子なんだね。

「んッ?!!」
「高校選抜のご褒美、どこまでだったらOKっすか?」
「っっ…」

胸を隠すために背中を向けていたら、肩に顎を乗せた彼が、耳元に呟いた。

どこまでって……。
何て答えたらいいんだろう?
この手の会話は、さっちゃんたちがいなかったら、ほぼお手上げなのに。

胸はぺたんこというほどでもないけれど、さっちゃんみたいに豊かとは言いがたい。
ちーちゃんみたいに華奢でもないし、幼い頃から鍛えて来た体は、丸3年放置したからといって、全てがリセットできるものでもなかった。
盛り上がった筋肉はだいぶ落ちたけれど、骨格は殆ど変わらない。

強いて例えるなら、元アスリートが引退後にモデルをしているみたいな、そういう体型だ。
ただし、色気を差し引いた状態の。

「何でもOKとは言えないけど、出来る限り善処するよ」
「本当っすか?」
「その口調、なんとかしてくれたら……ね」
「あ」

ちょっとくらい釘刺してもいいよね。
付き合ってまだ半月だもん。

そんな直ぐにあれこれと、軽やかに飛び越えていかなくてもいいよね?

「プール」
「へ?」
「優勝したら、褒美はレジャーランドにでも行きましょっ」
「えっ?!!」
「今のうちに、……水着用意しとかないと」

ぼそっと耳元に呟かれた言葉に、背筋がゾクゾクッとした。