「改めて、大学合格、おめでとうございますっ」
「……ありがとっ」
これを渡すためにわざわざ寒い中、来てくれたんだ。
彼の手から受け取ると、ガチャリと玄関の開く音がした。
「雫、風邪引くからせめてこれ着なさい」
「っ……」
「こんばんは。雫さんの合格、おめでとうございます」
「ありがとう。上がってと言いたいところなんだけど、雫にさっき断れたから、近いうちにご飯でも食べに来てね」
「あっ、はい!」
「お母さん、ちょっとだけ預かってて」
「はいはい」
母親からダウンジャケットを受取り、それを素早く羽織って。
彼を見送る体で、少し歩くことに。
「寒くないっすか?」
「うん、大丈夫」
「わざわざ送ってくれなくても平気っすよ?」
隣りを歩く彼が申し訳なさそうに顔を覗き込む。
「私が、もう少し津田くんと一緒にいたいの」
「っ……何なんすか、それ」
「へ?」
「合格した途端に、めっちゃストレートすぎるんすけど」
「あ」
そうか。
今まではセーブセーブと言い聞かせて、見て見ぬふりみたくしてたから。
合格した途端に、心の枷が一気に解放されたみたい。
自分でも驚くほどだ。
スッと目の前に差し出された手。
今までは『手、繋いでもいいっすか?』と都度許可を得てた彼が、何の躊躇いもなく手を差し出した。
そして、その手にぎこちなく自分の手を乗せる。
もう手を繋ぐのも当たり前のことなんだ。
合格したら付き合うと決めていたけれど、正直どういうのが付き合うということなのかも曖昧だったから。
こんな風に彼がリードしてくれたら、私はそれに応えればいいんだよね?
「ん?」



