「隙だらけの先輩、マジでかわいいっす」
「っっ」
「俺以外の男を、この距離に入れちゃダメっすよ?」
「あ、当たり前じゃないっ」

クスっと笑った彼は、満足げにおでこをこつんと合わせた。

「3分ももたないっすね」
「へ?」

3分って?
どこぞの戦隊ヒーローの戦闘時間?

あ、違う。
空手の組手の1試合の制限時間ってこと?

「状況的に俺の方が断然有利なのに、さっきから有効と技ありでガンガンポイント取られっぱなしなんで」
「……?」
「最後くらいは…」

そう言った彼は、大きな手で私の頭を支えて、鼻先が触れそうな距離を更に詰めて来た。

「……んっ」

生まれて初めてのキスは、脳内に打ちあがった花火が、炭酸みたいにパチパチと軽く弾けて。
セーター越しに伝わる彼の体温と、ちょっとかさついた彼の唇の感触だった。

ゆっくりと離れる唇。
彼の熱い視線を感じて、顔から火が出たみたい。
プシューッとオーバーヒートを起こした私は、そのまま彼の肩に顔を埋めた。

「やばっ、おもクソかわいっ」

もう何も言わないでっ!
恥ずかしくて、溶けてなくなるっ。

優しくポンポンと頭が撫でられ、ちっとも落ち着けそうにない、そう思っていると。

「同じ年とか、北島先輩の彼氏みたいに年上とか。……やっぱ、先輩にはそういう男の方がいいのかな?ってずっと不安だったんです」
「え」
「1歳ですけど、年の差は、一生埋まらない……から」

そんなことを考えてたの?
1歳年上でも、全然余裕なんてないのに。

「津田くんだから、好きになったんだよっ」
「っっ、そういうこと言ったら、試合開始の合図だって知らないんすか?」
「ふぇっ…んッ」

足払いを喰らってもいないのに、体が急に傾いて、気づいた時にはソファに横たわっていた。
待って待って待って待ってっっっ。
不意打ち行為は反則技じゃないの~~??