猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)


スマホの写メを見せてくれた彼。
事前に開けたい場所を伝えていたこともあって、目安になるスクショが何枚も送られていたようだ。

耳朶の端部分に開けたい私。
初めてが際だと難しいとは聞いていて、開けること自体どうしようか悩んでいた。

そもそも自宅に彼を呼んで、こんな風に二人きりになること自体が緊張なのに。
ピアスホールを開けることも、ご飯することも。
全てがドキドキで、心臓の音が彼に伝わったらどうしようと、脳内で爆竹騒ぎなのに。

ピアッサーだとかが用意してある自分の部屋に彼を通す。
何日も前から大掃除をしたから、たぶん大丈夫だと思うけど。

「うわっ、凄いかわいい部屋っすね」
「そ、そう?」
「女の子の部屋って感じです。うち男二人なんで。やっぱ違うんすね」

10畳の部屋をキョロキョロと見回す彼。
心臓が破裂しそうなほど、暴れ狂っていた、その時。
さっちゃんからメッセージが届いた。

『津田くん来た?ピアスは二の次でも、ちゃんと気持ちは伝えるんだよ?雫ならできるから!』

緊張していたのが、ほんの少し和らいだ気がする。
ちーちゃんからも1時間ほど前に同じようなメールが来ていた。

模試でも、空手や銃剣道の試合でも、こんなに緊張したことは無いのに。
津田くんを目の前にすると、どうしてこんなに緊張するんだろう。

「先輩?どうかしました?」
「え、あっ…」

もう逃げも隠れもできないんだから、目の前の彼を攻略する以外に術はない。
恋愛の何が難しいかって、合格ラインのようなものが不明確だからだ。

空手や勉強みたいに、ここが合格点、採点の基準というのが無いから……。