「あのさ、……女の子なんて、腐るほどいるじゃない」
「はい?」
「私みたいな大柄の子と一緒にいると、津田くん白い眼で見られるよ?」
「は?……何すか、それ」
「デートするのも、彼女にするのも、もっとちっちゃくて可愛らしい子とか、色気のある子とか、津田くんなら選び放題じゃない」
「言ってる意味わかんないっす」
「だから、私じゃ「俺は、雫先輩がいいんすよ。ってか、俺にとったら、先輩めちゃくちゃかわいいですし、その何て言うか……俺も男なんで、先輩のこと、そういう目で見たりもするっすよ」
「ふぇっ……?」

明らかに視線を逸らした彼が、コホンと咳払いした。

「先輩、自分に自信がなさすぎっつーか、卑下しすぎっつーか。先輩の中ではそれ重要かもしんないんすけど、俺の中では全く問題ないんで。むしろ、先輩がそうやって男に対して鉄壁ガードしてくれてて感謝っつーか。とにかく、俺には『女の子』にしか見えてないんで」

目の前で立ち止まった彼。
仰ぎ見ないと視線すら交わらないほど大きい。
そんな彼が優しい声音で囁いて来た。

「抱きしめてもいいっすか?」
「………へ?」

多くの人々が行き交う駅前で、彼の逞しい腕に抱きしめられた。
Tシャツ越しに感じる彼の体温。
凄く熱い。
それに、トクトクと結構な速さの鼓動が伝わって来る。

「ほら」
「……?」
「俺の腕にすっぽりとおさまるじゃないっすか。肩だって腰だって、線がこんなに細いのに、『デカい』の使い方、間違ってるっすよ?」
「っ…」