猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)


「このまま、俺んちまで歩いてっていい?」
「は?」
「今のこの幸せ、匠刀に分けてやんねーと」

弟の匠刀くんは恋人のモモちゃんと離ればなれになって数年。
音信不通でずっと会えずにいるのに、一途に想い続けてる。

だからといって、隣町まで歩いて行くだなんて。
結構な距離があるよ?

いや、距離の問題じゃない。
新興住宅地の20時過ぎは、6月というのもあって、結構夜の散歩をしている人が多い。

羞恥心云々というより、ご近所さんに見られて、変な噂でも流れたら……。

「今、恥ずかしいとか思ってんだろ」
「へ?」
「しずくぅぅぅ~~っ、好きだぁぁあぁぁ~~っ!!」
「ッ?!!」
「んんんっっ」

いきなり大声で叫ぶから、慌てて口を塞いだ。

「こんな時間に大声で叫んだら、騒音トラブルで通報されるよ!」
「んっんっんっ」

わかった、わかったと頷く彼。
軽犯罪法違反で通報されちゃうから、本当に。

大人しくなった頃合いを見計らって、ゆっくりと手を離すと。

「子供は2人。できれば、一男一女。名前は「ちょっと待って!」

再び口を塞いだ。
何か言いたげな目。
キッと睨みつけて、仕方なく塞いだ手をゆっくりと離す。

「結婚承諾しただけなのに、とか考えてんだろ」
「何で分かるの?」
「分かるよ、そんくらい。っつーか、結婚承諾した時点で、勝負ついてるからな?」

分かってるよ。
どんなに難攻不落な相手でも、諦めずに挑み続けることを。
それは身をもって感じたから。

「マッチング(就試)と卒試と国試、全部が無事に終わったら、挙式すんぞ」
「っ……」