新興住宅地の20時は、結構夜の散歩をしている人も多くて。
すれ違うご近所さんの視線が痛い。
「文集の『結婚相手に求める条件』の欄に、『カッコよくお姫様抱っこしてくれる人』って書いてあった」
「………え、私そんなこと書いたっけ?」
「おぅ、書いてあった」
言われてみれば、そういう人がタイプだったような。
というより、デカい女をお姫様抱っこできる人なんていないと思ってたから。
「それと、『デートプラン』の欄に、『夜の散歩』って書いてあったし」
「えぇ~~っ?!」
「あともう1つ」
「……何?」
私は一体何を書いたのだろう?
若気の至り。
無邪気な子供の悪戯としか言いようがないような……。
ごくりと生唾を飲み込んで、視線が絡まった、次の瞬間。
「俺と結婚して下さい」
「……っ」
思い出した。
『プロポーズのシチュエーション』という欄を。
卒業文集のあるあるなのかもしれないが。
ちょっとドキドキするような質問が多くて。
その当時からずっと憧れていたシチュエーションがある。
『真っすぐと見つめ合って、ストレートな言葉で』
どこで、とか。
何歳に、とか。
他の子たちが書くようなシチュエーションではなく。
私は素直に、一本勝負で立ち向かってくれるほどの愛が欲しいと思っていたから。
「返事は?」
「……はい、喜んで」
「っしゃあぁっっ!!」
「きゃっ…」
抱きかかえられている状態なのに、更に体が持ち上がった。
もうっ、馬鹿力なんだから。
「今の……プロポーズじゃない?」
「いちいち声に出すなっ」
「だって、こんなところで」
「いいから、黙ってろ」
コンビニから出て来た高校生カップルが私たちの横を通り過ぎてく。
ちょっと前の私だったら、絶対恥ずかしくて死にそうだったと思うけど。
今は羞恥心よりも、幸福感の方が勝ってる。



