「物件探しって、結構大変なんっ…?!」
不動産屋さんを後にして、数歩。
コインパーキングまで30メートルほどあるのに。
いや、距離の問題じゃないっ!
国道に面してる公道で、突然唇を奪われた。
「んっ……っ……っんんんッ!!!」
オリンピックで銅メダルを獲得し、翌年の全世界空手道選手権大会で優勝した彼。
身長190センチ弱、しなやかな筋肉を身に纏った強靭な体は、『デカい女』と呼ばれてきた雫でもびくともしない。
引き剥がすように胸を突き押すも、意に介していない様子で腰を抱き寄せて来た。
国道を走行する車からの視線も、通りすがる人々の視線も。
ついさっきまで会話していた細井さんの視線もドア越しに感じてるのに。
さすがの雫も場の空気に流されるわけにはいかないと、虎太郎の脇腹に手刀を打ち込んだ。
「ぅっ…」
さすがの虎太郎も不意打ちの手刀は効いたようで、僅かに呻きながら渋々雫を解放した。
「物件探し、ナシにするよ?」
「ちょっ……それはマジで困る」
キッと睨みを利かせ、雫はコインパーキングへと歩き出す。
一刻も早く不動産屋の前から離れたかった。
新居探しは結局いい物件が見つからず、時間をかけて探すことになったのだ。
「雫~、ごめんって」
「もうっ、知らないっ」
「悪かったって」
「本当に反省してる?」
「してるしてる!」
「本当かなぁ…」
後を追いかけて来た虎太郎は、雫に抱きつくようにの肩を抱き寄せ、機嫌取りを始めた。
「これ、夢じゃないよな?」
「夢にしたいの?」
「っんなわけあるかッ!」



