猛虎の襲撃から、逃れられません!(加筆修正中)


細井さんを前にして、さすがの虎太くんも気を遣ってるみたい。
耳打ちして来た。

「奥様からのご希望はこちらになりますが、ご主人様のご希望がございましたら、遠慮なくお申し付け下さいね」
「ッ!?!?」
「ご結婚後の新居となりますと、こういった間取りが人気ですが、VRでご覧になりますか?」
「お願い出来ますか?」
「はい、勿論です」

細井さんオススメの物件を表示して貰っていると、机の下で虎太くんが脚を突っついて来た。

『奥様』『ご主人様』『ご結婚後の新居』
聞き慣れないワードが飛び交い、さすがの虎太くんも驚愕してる。

付き合い始めてからこの6年で、プロポーズは100回以上して貰っている。
最近じゃ、もう口癖みたいになってて。
正直、ドキドキ感だとか感動に浸るみたいな感じはなくなってしまったけれど。

それでも、長く付き合ってると『結婚』の話題から逃げるようにはぐらかす男性が多い中。
彼はいつだって真剣に気持ちを伝えてくれるから。

はぐらかすのも逃げるのも、いつだって私の方だ。

だから、そろそろ。
彼の気持ちに少しずつ応えていく時期なんじゃないかと思えて。

すぐに希望の物件が見つかるとは限らないから。
今は、『漸く心の準備ができたよ』という気持ちを、こうして態度で示すのが一番だと思ったの。

「私1人に選べって?」
「え…?」
「2人で住むんだから、虎太くんの希望も言ってくれないと困るんだけど」
「ッ?!!」
「匠刀くんいるし、さすがに新婚でいきなり同居は無理だからね?」
「っっ、……マジかっ」

プロポーズの返事を、初めて会った営業レディの前でするのもどうかと思うけど。
虎太くんだって悪いんだからね?
ちゃんと指輪を用意して、プロポーズしてくれたこと、一度もないじゃない。

女の子の夢なのに。