そうだよね。
そういうものも必要だよね。
気持ちが解決したら済む問題じゃなかった。
「俺は構わないんだけど」
「……へ?」
「デキたらデキたで、責任取るし。っつーか、あの紙に今すぐサインして貰いたいくらいだから」
あの紙。
婚姻届のことだ。
オリンピックに出場するために、ブリスベンへと出発する前夜に、彼から記入済みの用紙を渡された。
海外へ大事な娘さんを連れて行きたいという意思の表れを形で示すために。
私の両親に渡す形で差し出されたもの。
あの日から、私の手元にある。
「まだ17歳のくせに」
「あぁ~っ、それ言っちゃダメなやつ!!」
「ごめんごめんっ」
彼は来月の10日に18歳になる。
だから、正確にはまだ結婚できる年齢ではないという事実。
それを言われるのが一番嫌らしい。
たった1歳。
されど1歳。
あと1カ月ほどしたら、この1歳の差も、感じなくなるのかな。
「今、すっげぇ余裕ぶちかましてんだろうけど」
「……へ?」
にやっと口角を上げた彼。
ふにゅふにゅと、停止していた手が再び蠢き始めた。
「んんっ…」
「声がエロい」
「やだっ、変なこと言わないでよっ」
「ここ?……それともここ?」
「っっ~~っ」
挑発行為とも取れる反則技を仕掛けたのは私だ。
「絶好の機会を逃すわけねーだろっ」
「ッ?!」
虎太くんはたまに突然猛獣と化す。
いや、違うのかも。
紳士的な彼が猛獣になるんじゃなくて、猛獣が紳士的にカモフラしてるだけ?
もうよく分かんないっ。
虎太郎という名前だけあって、本当に猛虎だよっっ。
「待って……待ってっ、……ホントにちょっとだけ待ってってばっ」
覚悟を決めたはずなのに、いざとなるとどうしていいのか分からない。



