自室のベッドに優しく下ろされ、熱く唇が塞がれる。
キス自体は何度も経験してるのに。
やっぱり今日のキスは全然違う。
終わりのないキス。
どうやって息してるのかさえ分からないほどに。
次々と押し寄せてくる甘い刺激に、吐息が淫らに漏れて…。
服の中に潜り込んで来た彼の手の熱さに、心臓がけたたましく跳ね上がる。
「雫…」
幼い頃から体が大きかったせいで、『雫』という可憐な名前が嫌いだった。
呼ばれる度に、不釣り合いだと思い知らされるみたいで。
だけど今は、彼に呼ばれる度に好きになってく。
愛おしく呼んでくれるから。
私以外の人は、決して呼び捨てにしたり、むやみに下の名前を呼んだりしないから。
特別だと思わせてくれる彼だから。
喪女の私を丸ごと好きになってくれた人だから。
「んっ…」
大きな手が、胸を包み込むように優しく蠢いていた、その時。
何故か、ピタッと手が止まった。
思わず、瞑っていた目が開く。
そして、絡まった視線の先にいた彼は―――。
「今、聞かせて貰ってもいいっすか?」
「なっ……にを?」
「この間の返事」
「………っ」
何を突然言い出すのかと思ったら。
オリンピック直前に言った約束のことみたい。
プロポーズのプロポーズ。
いつか、結婚するなら相手は俺に……的な意味の言葉だ。
「今ここで雫を抱いたとして、……返事を聞く前に結婚を強いる事態になるのは避けたいから」
「…………?」
「着替えは用意できても、……今日は持ってないっすよ?」
「………っっ」
やだっ、私ったら。
大事なことをすっかり忘れてた。
「その顔だと、雫も用意してないってことだよな」
「っっっ」



