「えぇぇぇええぇぇ~~っっっ?!!」
「園ちゃん、声が大きいよっ」
「発狂したくもなるでしょっ!」
こっそりオリンピックに彼が出場することを伝えた。
本当は連盟から公式発表が出るまで、秘密なんだけど。
「まだ非公式だから、彼氏さんにも黙っててね」
「うんうん、それは大丈夫だけど。なんかすっごいマッチョな人だなぁとは思ってたけど、そんな有名な人なんだね」
「……彼より、彼のお父さんの方が今はまだ有名人かな」
「お父さんも有名人なの?」
「声が大きいって」
「あ、ごめん」
ほぼ満席状態だから、ガヤガヤしててそんなに気を遣う場所じゃないけれど。
やっぱりまだ声は落として話したい。
「彼のお父さん、オリンピック金メダリストだから」
「まぁ~じでッ?!」
「……ん」
「じゃあ、空手一家なんだ」
「自宅が空手道場で、都内でもかなり有名な道場だよ」
「そうなんだぁ」
彼氏の自慢話みたいなのをする日が来るなんて思ってもみなかった。
いつも聞くばかりで、それが当たり前だったけど。
なんか自分から話すのって、結構むず痒くて恥ずかしいものがある。
先月に行われた高校選抜で優勝した彼は、それまでの世界大会でのポイントもあって、オリンピック出場が確定した。
今週末に連盟のホームページで公式発表になるらしい。
空手に興味が無ければ知らないだろう。
柔道ほど競技人口が多いわけじゃないから。
「要らないって言われてるんだけど、さすがにタダでは行けないでしょ」
「そうだね。近場の温泉とかならまだしも、オリンピック期間って価格も上がるだろうし。そのためのバイトなんだ」
「……うん」



