あの日、桜のキミに恋をした

私の初めての文化祭は、苦い記憶を残したまま呆気なく終わってしまった。


あれから康介とは話もできていないし、ちゃんと顔も合わせていない。


当然、朝私の家に迎えに来ないから、お母さんには「あなた達分かりやすいわね」って笑われた。


確かに家までは来ないけど、最寄駅に行くと彼は必ずいつも改札の前で待っていて、私の姿を確認するとスタスタと改札の中へ入っていくのだ。


一応気にかけてくれているみたいだけど、もう彼が何を考えているのかはよく分からない。


「でもさ、これまでも色々喧嘩してたじゃん。その度にちゃんと仲直りできてたんだし、きっと大丈夫だよ!喧嘩するほど仲がいいって言うじゃん!」


喧嘩の経緯を知っている美月はこうして励ましてくれたけど、今回ばかりはダメかもしれない。


今まではお互いの思っていることがぶつかり合って言い争いになる喧嘩が多かった。


その時はお互い血が昇っているからこそ、時間が経って冷静になった時に「言いすぎたな」って反省して仲直りに至る。


これがいつものパターン。


でも今回に限っては、お互い思っていることをぶつけ合ったわけではない。


私は「悪かったな」って思ったから彼に向かって謝った。


でも康介は何か不満を言うわけでもなく、ただひたすら自分とばかり向き合っている。


正直今は「謝ったんだからそんなに怒んなくていいじゃん」と思ったりもするけど、いつもみたいにそれを康介に言う気にはなれない。


なんていうか、あの時の彼は怒っているというより悲しそうな、残念そうな顔をしていた。


呆れられて、愛想を尽かされた線が濃厚だ。